経済

「没落決定」は言い過ぎ|EU離脱してもイギリス経済には深刻な影響はないってハナシ

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イギリスがもめてますね。

2017年3月に、ついに『EU脱退通告』提出しちゃったイギリスですが、ここにきて、

 

「ところで、

南北アイルランドの関税どうすんのよ!?」

 

ってな問題が明るみになってきており、議会が紛糾しております。

英国のEU離脱協議、北アイルランド国境問題が最大の懸念材料に

 

正式名称「United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland」が示すように、僕らが指す「イギリス」とは地理的には「グレートブリテン島+北アイルランド」のことであります。

 

 

つまりアイルランド島の北側(赤)は英国の一部で、南側(緑)は独立国家なわけです⤴︎

そして南アイルランド(緑)はEU加盟国ね

ということはですよ、これまでだったら曖昧でよかった南北アイルランド間の国境ラインが、

かの『ブレグジット』のせいで、このままだと「がっつり関税取られちゃうライン」になってしまうというわけです。

イギリスがEUを離脱するってことは、アイルランド島の中でEU加盟国とそうでない国に分離するってことであり、

当然ながら、両国の境にはハードな『国境』を引かざるを得ないってハナシになります。

 

そこで問題になるのが、そこに暮らす市井の人々

アイルランドって島には、「家と職場が南北に分かれてる」とか「近所のスーパーが国境の向こう」なんて人が結構いておりまして、

そこにガッツリ・ズバッ!と国境引くってことは、モノやサービスの移動はおろか、そこらへんの住民レベルでの自由な行き来までもが制限されることになるんですよ。

これが、事態を極めてややこしくしてる。

 

「向こう側の母ちゃんに会うのに、いちいちパスポートをチェックされんのか!?」

とか、

「ガチで検問つくるって…オレの通勤どうなるんだよ!?」

とか、

「向こう側で買った弁当にまでガッツリ関税かけんのかよ!?」

とかね。

イメージ湧きますかね?

 

もっとわかりやすく説明するなら、たとえば東京に国境が引かれたとしましょう。

僕が新大阪駅で「551」の豚まん買って、新幹線に乗って東京に向かうとしましょうか。

駅を降りると、まずは国境警備員にパスポートをチェックされます。

そして僕が「551」の袋をぶら下げてるのを見つけた入国管理員が、

管理員「それ(豚まん)を持ち込みたきゃ関税払え。払うのが嫌なら今ここで残さず食え。」

となるわけです。

 

そんなクレイジーな状況にならないためにどうするか!?で、今イギリスとアイルランドでグダグダやってるわけです。

ちなみに英国への「EU法の適用期限」は決まってます。2019年3月で終了。

このまま何も対策打たなければ、来年の4月以降は南北アイルランド間の人・モノ・サービスの移動にはアホみたいな税率がかかることになります。

 

「間に合うのかよ!?」

 

ってな具合に、イギリス国民・アイルランド国民・EUの三つ巴で現在超焦りながら協議が繰り返されてるわけです。

解決できんのかね?これ。

まぁこの問題については今後の展開を注視していくとして、今回は、英国のEU離脱後の影響について述べてみましょう。

最初に言いますが、EU離脱はイギリス経済への致命傷にはならない、というのが僕の見解です。

今回は6,000字を超える長文です。

 

『国際金融センター』として、ロンドンに代替可能な都市はない

ロンドン市の中心部に『シティ』と呼ばれる1.6km四方ほどの狭い区画があります。

そしてこの『シティ』こそ、世界最大の国際金融センターであるとされています。

国際金融センターのある都市として有名どころでは、ニューヨーク、ロンドン、香港、シンガポール、東京、上海といったところですが、ロンドンの『シティ』が取り扱うマネーの量は上記6都市の中で最大規模。

あの『ウォール街』よりも多いのは僕も知りませんでした。なるほど。イギリスが「金融でメシ食ってる」などと揶揄される所以はコレなんだなと。

ということは、この『シティ』の浮沈にこそ、イギリスという国の未来が懸かっているということです。

 

さて、EU法の中には「外国の金融機関がEU圏内で営業するには、EU圏内のどこか一ヶ所に支店を置かなきゃならない」ってなルールがあります。

つまり、EU域内どこでもビジネスができる「単一パスポート」が欲しけりゃ、EU内にどこか支店構えろよ?というわけです。

そこでアメリカはじめ世界中のメガバンクや投資銀行がこぞって目をつけるのがイギリス・ロンドン

どうせ支店おくなら『シティ』に構えようぜ!と。

金融インフラ最高レベルだし、『シティ』に支店あります!ってだけでなんか信用度上がるし、何より英語圏だから普通に言葉通じるし超ラクじゃないかと。

現に世界に名だたる巨大企業は、ほぼこの『シティ』に支店をおいてます。

 

ところが、こともあろうかイギリス自体がEU離脱しやがるもんだから、以来、世界最高の金融センターである『シティ』にもいろいろケチがつき始めたわけです。

 

イギリス=オワコン論者の言い分

企業が『シティ』に支店構える最大の意義とは、「シティを足がかりにすれば、EU全体でビジネスができる」点にあります。

シティはこれまでEU域内における「ハブ」のような役割を果たしてきたわけですが、今後はそれができなくなる。

イギリスがEUから離脱するとなれば、当然ながら、シティに支店があっても「単一パスポート」はもらえないわけだから、EU相手にビジネスしてる企業からすれば意味がなくなるわけです。

EU域内でビジネスするには、世界中の金融機関は、イギリス以外のもう一ヶ所で支店を出す必要が生じる。

となれば、「イギリスに支店おく意味ねーじゃん!」ってなるわけです。

『だったら、いっそのことシティから去ろうぜ!』と、最悪の場合、ロンドンから支店がどんどん流出するのではないか?

しかもイギリスの場合、金融とその関連サービスが生み出す雇用の割合は、総就業者数の内なんと15%も占めておりまして、

もし支店が流出するとなれば、イギリスの全雇用の結構な部分がロンドンから消え去ると思われます。

銀行業に携わる人たちって、年収2000万とか当たり前の高額所得者なんですよ。彼らが去れば、当然ながら、イギリス国内における消費は縮小するし税収もガクンと減るでしょう。

金融どころか対EUの輸出入に関しても、今後アホみたいな税率でガッツリ関税かかってくるので、イギリスの国際競争力は否応なしに低下する。結果、

イギリス=没落決定

ってのが、イギリス悲観論者の主張なわけです。

 

そうなるのか??

 

いやいや、そう単純に事がすすまないのが実経済のおもしろいところであります。

 

過熱する国際金融センター争奪戦

『ブレグジット』にともない『シティ』の国際金融センターとしての地位にケチがつくのであれば、当然ながら、EU各国はその利益の空白を埋めるべく動くでしょう。

現に、パリやフランクフルトといった巨大経済都市が『シティ』の役割を奪おうと動き始めています。

 

もし裕福になりたいのなら、あなた方はフランクフルトに拠点を構えるべきだ。

孤立し、望遠鏡の中から世界の情勢を見たいのなら、そのままロンドンにとどまればいい。

フランクフルト市長ペーター・フェルトマン

 

英国がEU域内市場から出て行くのであれば、シティは欧州の単一パスポートを維持はできない。

フランソワ・ドガロー仏中銀総裁

 

「オレが全部面倒見てやるから、金融屋はみんなこっちに来いよ。」というわけですね。

当然、イギリスも言われっぱなしではありません。

 

ロンドンの作り出す銀行や金融サービスの「複雑な循環システム」は、他国にはマネできないものである。

各国が狭量で仮説にすぎない国益にもとづいて、ロンドンの地位を傷つけようとするのは重大な誤りである。

フィリップ・ハモンド英財務相

 

「お前らにゃこのステージは100年早いんだよ!」といったところでしょうか。

 

ロンドンがもつ、あまりに秀逸すぎる金融インフラ

英財務相の言うとおり、ロンドンの地位を埋めるのは容易いことではありません。

フランクフルトやパリがいかに巨大経済都市であっても、「国際金融センター・ロンドン」に取って代わるには正直役不足です。

まずフランクフルトは、ロンドンに比べ敷地面積が狭く収容人口も少ないので論外。

パリに関しては、フランスって国自体が雇用条件が厳しい(日本同様クビにするとうっさい)ので、雇用の流動性という観点で論外。

両都市とも英語圏でない時点で超論外。

そもそもですよ、

1.国際金融センターとしての長い歴史がもたらす信用とブランド力

2.高スキル労働者の集積地

3.法務・税務コンサルタントなど、金融に付随するサービスの充実度

4.多様な文化と豊かな国際性がもたらす、都市全体が放つ活力

5.大学(オックスフォード・ケンブリッジ)などの関連組織の地理的集中

6.海外オフショア投資資金の一大集積地

 

これらを全て兼ね備える『ロンドン』に取って代われる都市など、欧州はおろか世界のどこにもないんですよ。

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確かに、イギリスがEU離脱すれば、EU圏との取引に限定する金融機関とかは間違いなくシティから去ることでしょう。

ユーロ建て取引なんかは結構減ると思われます。なんせ、ロンドン経由の取引のうち、ユーロ決済の占める割合は約20%をも占めてますからね。

最悪の場合、その約20%がごそっと消えるかもしれない(最悪の場合ね)。

 

うん確かにヤバそうだし、実際ヤバいと思う。

でも、たとえそうであっても一時的に混乱が生じたとしても、『シティ』の地位は揺るがないと考えます。理由は、

ドルや人民元はじめユーロ以外の通貨の取引量、オフショア資金の集積に関しては、やはり、『シティ』が圧倒的であるからです。

世界で使われるマネーは、ユーロが全てじゃないからね。

こうしたロンドンのもつ圧倒的なまでの優位性は、イギリスが2世紀以上もかけて築き上げてきた『成果』なのであり、

『叡智の結晶』ともいうべき同市の金融インフラは、ぽっと出の都市がやすやすとマネできるものではないのであります。

 

ロンドンの金融インフラについて知りたければ、この本を読めば概ね理解できます。⤵︎

 

金融以外での『ブレグジット』がもたらす影響は?

イギリスの輸出産業とかは特にヤバいんじゃない?って論をよく見かけます。

確かにヤバいと思いますよ。

2019年3月以降は、EU向けの輸出にはガッツリ関税かけられる可能性が高い。もしそうなれば、イギリスの製造業なんて普通に考えて「終了」でしょ。

そうならないよう、イギリスも死ぬ気でEUと交渉してるんでしょうが、いかんせんEU側の態度は「冷ややか」らしい。

もっともEU側からすれば、冷たくなるのも至極ごもっともです。

だって、もしここで安易に妥協なんてしてしまったら、「離脱してもたいしたことねーじゃん!」「英国に続け!」などとEU各国の「はねっかえりども」が勢いづきかねない。マリーヌ・ルペンとかね。

ヘタすりゃ、第2第3の『ブレグジット』が起こりかねないわけで。

欧州各国にくすぶる、こうした「はねっかえりども」を黙らすためには、離脱したイギリスには、見せしめとして、是非とも痛い目見てもらわなきゃならないわけです。

正直、交渉うまくいかないと思うよ?

 

『ブレグジット』でヤバくなるのは、実はイギリスではない

確かにイギリスの輸出産業に限っていえば、今後ヤバくなる可能性大なのだけど、

じゃあイギリスという国全体の稼ぎでみた場合ヤバいのか?というと、

実はそうでもありません。

そもそもイギリスの製造業なんて、ここ数年全然伸びてないからね。いや、というか現在のイギリスは、もはや「モノを作らない国」といったほうがいいかもしれない。

かつて世界の船舶の80%を製造するほどの「モノづくり大国」であったのは、大英帝国の頃のハナシです。

ジャガーやロールスロイス、ランドローバーといった英国自慢の国産高級自動車は今やイギリスの手を離れ、BMWやインドのタタ・グループの一所有ブランドに成り下がっています。

そもそも「Made in England」の製品なんて、パッと頭に思い浮かびますか?せいぜい輸入菓子くらいなものでしょ。

現に、イギリスのGDPの中で製造業の占める割合なんて、たかが7〜8%なんですよ。ブレグジットの悪影響で、もしこれが(多く見積もって)20%減っちゃいました!となっても、GDP全体でいえば1.4〜1.6%減でしかないわけです。

いやこの程度なら、努力すれば挽回可能じゃね?と。

ドイツみたく製造業が22%も占めてるのであれば、話は深刻なんでしょうが、「あんまりモノづくりしてない」イギリスからすれば、

「うん、確かに関税ヤバいけど…ってか、どーでもよくない?」

で終わるんじゃないか。

 

そもそもイギリスの対EUの貿易収支自体、赤字というか「真っ赤っか」ですからね。

であれば、むしろ対イギリスの貿易収支が超黒字のドイツやフランスのほうが、よほど『ブレグジット』の影響やばくね?と僕は思うわけです。

イギリスの場合、そもそも対EUで赤字なんだから、他の国とFTAでも結んで頑張りゃいいんじゃないの?と。

 

「英連邦」忘れてないか?

「ユニオンジャックの矢」という言葉があるように、

 

ユニオンジャックの矢

ロンドンを起点にドバイ、バンガロール、シンガポール、シドニーと一直線につながる、英国自慢の一大ネットワーク。

 

イギリスには『英連邦』という、大英帝国時代の名残ともいうべき独自の経済・文化ネットワークがあります。

 

 参照元:ユニオンジャックの矢―大英帝国のネットワーク戦略

 

英連邦の加盟国は現在なんと52カ国。アフリカ、東南アジア、オセアニアの大英帝国の旧植民地であった国々で構成されています。

「英連邦」なんて自由貿易圏でもない単なる仲良しクラブに何の意味があるのか?こんなものに期待するのは、ファンタジー小説にかまけた情弱の考えることだ。

などとバカにする奴がいるけど、

「共通言語(英語)」「共通の文化」という強い繋がりが放つパワーを侮るべきではありません。現に英国は、こうした『コモンウェルス』を通して様々な巨大プロジェクトを成功させている。

 

情弱はどっちだ?

 

たしかに『英連邦』には自由貿易のような強制力はありませんが、連邦加盟各国が自らの意思で進んで協力し合う空気があります。

宗主国と加盟国の協力体制があるからこそ、世界中の開発や産業の情報が上記『ユニオンジャックの矢』をとおして『シティ』にもたらされているのは、決して見過ごせない事実なのであります。

こうしたネットワークを上手く活かせば、EU離脱の悪影響を緩和できるくらい経済回せるのではないか。

EU離脱ごときで死ぬほどイギリスはヤワではないのであります。

 

とはいえ、EUを離脱してもイギリスには何も良いことありません。あるとすれば、移民を受け入れなくてすむだけ。(それが良いんだ!と言われれば、まぁ良かったんでしょう)

何も良いことはないのだけど、じゃあ悪影響があるのか?といえば、思ったほどじゃないってのが実際のところではないでしょうか。

 

要は結果オーライ

過去の遺産って、すごいよね。

もっともアイルランドの人たちは、シャレにならないけどね。

 

こちらの書籍もおススメです⤵︎ 過去40年にわたりイギリスを見続けてきた人の手記です。僕らの知らない英国の真の姿を知ることができます。

 

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公務員でありながら公務員が嫌いな完全社会不適合者。

 

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