『Financière Richemont (フィナンシェール・リシュモン)』とは、宝飾品、高級時計、高級筆記具を扱うスイス国籍の企業だ。
日本では『リシュモン・グループ』といえばお馴染みの方もいるだろう。取り扱い商品は、見事なほどの一流ブランドばかりで占められている。
・ランゲ&ゾーネ
・ジャガー・ルクルト
・カルティエ
・IWC
・ラルフ・ローレン
・ピアジェ
・ヴァンクリーフ&アーペル
・モンブラン
・アルフレッド・ダンヒル
そうそうたる顔ぶれ。日本でもおなじみ名の通った高級ブランドばかりだ。
ブランドビジネスとはいかにも儲かるイメージがあるが、本当においしい商売なのだろうか?
ブランド力とは認知力や信用力のこと。これらが競合他社に比べズバ抜けて高いということだ。
長年にわたり気づきあげられた圧倒的認知度、そこに裏付けられた信用力に対して、客は喜んでお金を払う。
ブランドを所有すること自体が消費者にとっての喜びであり、商品機能やクオリティにはさほど関心がない。品質が良いのは間違いないが、それが値段ほどのものかというとそうでもない。
消費者ははそこに気づいてはいるが、誰もが知るブランドマークを身につけること自体が喜びであり、品質はそこそこでも十分に納得するのである。
要するに、ブランド商売とは、要するに消費者の虚栄心やコンプレックスをくすぐる商売ともいえる。だから購買意欲を強烈にそそるのである。
だから、目から飛び出るほどの高額な値付けでも買われるし、客はそれを喜んで正当化する。
非常に儲かりやすい、おいしいビジネスといえるだろう。
もう一つ、競合他社と比べて有利な点は、圧倒的ブランド力を有する者は価格決定権を握ることができるということだ。
薄利多売の低価格競争という不毛な死闘に巻き込まれる恐れなど決してない。むしろ、逆に強気の価格を提示したとしても飛ぶように売れることが多い。
メチャクチャ儲かるの。世の中に、自社商品のブランド化を目論む企業がごまんといるのも頷けるだろう。
『フィナンシェール・リシュモン』への投資判断
ならば、圧倒的ブランドを多数傘下に置く『フィナンシェール・リシュモン』は儲かっているのだろうか?
収益の推移と株価の動向を分析してみよう。
まず収益はどうだろうか?


過去6年間の売上高と営業利益は実に順調に推移しているように見える。が、2015年を境に純利益と営業キャッシュフローが急激に落ちている。
営業キャッシュフローマージン率も2015年はガクッと急降下しているが、それでも15%を超えてるのは大したもんだ。
売上が急降下した原因は、中国の景気がピークアウトしたからだと言われており、現に高級ブランドビジネスはアジア地域の比重がかなり大きい。
そのためアジア不振の影響をモロに受けたというわけ。
ところで、我が国の貢献度も侮ってはいけない。
日本単体での売上はリシュモンの総売上の約8~10%を占めている。

これは中国・アメリカに次ぐ規模で、日本人がいかにブランド大好きかを物語っている。
まぁ、過去記事(人生を刻む、IWCの時計)にもある通り、私もIWCの腕時計愛用してるわけで他人事じゃないんだけどね。
リシュモンのティッカーシンボルはCFRUY、これはADR銘柄だ。
ADRとは、American Depositary Receiptの略で日本語訳では米国預託証券。
ADR銘柄は、アメリカ以外の外国の株式でニューヨーク証券取引所に上場していない。
しかし銀行が外国で買い付けた株式を担保に、アメリカでもドル建てで買えるようにしてる銘柄、ということだ。
ここで注意が必要なのは、ADR銘柄は余分な手数料がかかるということだ。
保有する限りは管理手数料が定期的に余分にかかる。
要は投資信託みたいなものか。
株価は目下暴落中だが、底打ち感があるように見えなくもない。
現在のPERは13.94倍
配当利率2.72%
現時点では、割高な水準ではないと思う。
そして殿様商売という性質上、利益率も総じて高く儲かるビジネス形態である。
これらのことを鑑みて、リシュモンには投資する価値があるのだろうか?
ボロい商売だろうが、安心して投資できるかといえば、実はそうとも限らないのだ。
私は、こ奴らに対してあまり良い印象は持っていない。
リシュモンだけではないが、これまでスイス時計業界はかなり横暴な価格設定を繰り返してきた。
『殿様商売は結構だが、あまりチョーシこいてんじゃねーぞ…』
往年の高級時計ファンを自称する者ならば、誰しもがホロ苦い経験をさせられたはずだ。
今回はこの辺で区切ります。
次回は、私とリシュモンのホロ苦い思い出を語りたいと思います。