5年ほど前、当時愛読してたブログがあります。
タイトルは、
『となりの個人投資家まつうらじゅんの場合』
タイトルのとおり、「まつうらじゅん」という投資家の投資理論を綴ったものですね。投資家の間では今でも有名なので、ご存知の方も多いでしょう。
この方、ブログのコメント欄があまりにも炎上しすぎて「ブログ閉鎖」にまで追い込まれたという非常に稀有な方です。投資家の間では「伝説」と言っても過言ではない人物。
今回は、「まつうらじゅん」という伝説の投資家のお話をしたいと思います。
まつうらじゅん
手に負えなくなり閉鎖するほどの炎上。
ただの炎上ではありません。文字どおり「ハンパない」レベルの炎上です。「まつうらじゅん」に比べれば「辻ちゃん」の炎上などボヤ程度ですよ。
裏を返せば、彼の影響力がいかにとてつもないものであったかの証左であります。
今は亡きブログなので残念ながら目にすることはできませんが、僕の薄れつつある記憶でも、なかなかに中毒性のある内容でした。
というか麻薬。あれほどのブログは2度とお目にかかれないかもしれない。
僕も中毒者の一人で、彼の記事を読み漁る日々を過ごしていました。毎日の更新が楽しみで仕方なかった。
内容は株式投資です。偏重ともいえるほどの「営業キャッシュフロー」への重視や長期的視野に立った投資法。その投資スタンスに、当時の僕は大いに共感をくすぐられたものです。
共感してたとはいえ、それが素晴らしかったか?というとそれはない。
一極集中投資
「リスク管理」など忠告するのが虚しくなるほどに、まつうらさんのポートフォリオはヤバかった。尖っていた。
その総投資額は当時で確か4000万円ほどだったでしょうか。
資金の投下先は普通株3つのみ。4000万円の振り分け先が普通株3つというのも驚きですが、もっと驚くべきはその配分比率。
・アダストリアHD(2685)90%
・ハーモニーゴールド(HMY)7%
・ポスコ(PKX)3%
ハーモニーやポスコはオマケですね。
これほどのリスクテイカーは今も昔も、「まつうらじゅん」以外に見たことがない。
※そういや、似たような比率でIBMに投資した人いたな。
アダストリアとは何か
アダストリアホールディングスという社名をご存知ない方も多いでしょう。現在では社名を改め(株)アダストリアとなっていますが、同社のビジネスはアパレルです。
・グローバルワーク
・ローリーズファーム
・nico and…
と聞けば、お分かりいただけたるでしょう。(株)アダストリアは、これらアパレルブランドの親会社です。
アダストリアへの揺るぎない自信
アダストリア株に約3600万もの大金を投資していたわけですが、はっきりいって、これは正気の沙汰ではありません。
さすがの僕も初めてこれを見た時は引きましたよ。
クレイジーだなと。
ただのクレイジーなら読み飛ばして終わるんですが、まつうらさんはバカではありません。そのクレイジーさをかき消すほどの深い分析力と、読み手を洗脳するような文章力がありました。
面白いんですよ。だから世の投資家から注目されていた。
かくいう僕もまつうらさんの虜で、今後の彼の展開がどうなるか楽しみで仕方がありませんでした。
自信の根拠
彼がなぜ「アダストリア」にそこまで強気だったのかというと、それは同社のビジネス形態にありました。
当時のアダストリアは変革の過渡期にあり、商品の作製を複数社にアウトソーシング依頼するという水平分業型ビジネスから、自社で一貫生産する『垂直統合型』へ変革の舵を切っている最中でした。
垂直統合型というビジネスモデルへの変革。
これが「まつうらじゅん」の投資魂に火をつけたようです。「グロース株はアダストリアをおいて他にはない」と言わんばかりの盲信ともいえるほどの溺愛ぶりでした。
調子に乗った「まつうらじゅん」
まつうらさんのアダストリアの購入単価は、確か3000円前後だった記憶があります。
当時はアベノミクス効果がバリバリ効いていた時期で、日本株相場全体がアホみたいに上り調子。その追い風もあって、アダストリアの株価も4000円まで上昇。
当然ながら、まつうらさんの投資成績もとんでもないものでありました。
正直、まつうらさんは調子に乗ってました。
『金を稼ぐのなんて簡単だ。成長企業に集中投資する。これだけでいいんだから。』
忘れられない印象的な言葉です。
年若い投資家がわずかな期間で総資産を約1000万も増やしたとなれば、むしろ調子に乗らないほうがおかしい。
暴落からブログ炎上
そのまま上手くいくほど株式投資は甘くない。
その後、事態は暗転。
まつうらさんの期待も虚しく、アダストリアは四半期決算をことごとくしくじり始めます。結果、アダストリアの株価は4,000円から2,000円まで墜落。
50%下落は暴落ですよ。この暴落が、「まつうらじゅん」にとっての地獄の引き金となります。
中毒性のある影響力で日々アダストリアの「正当性」を煽りすぎていたため、釣られた投資家は莫大な数に膨れ上がっていました。彼ら全員ハンパない含み損を抱えることになります。
当然ながら、その怒りの矛先は「まつうらじゅん」に向かい始める。
連日連夜炎上しました。
コメント欄に書き殴られた罵詈雑言の汚さは、2ch顔負け。ブログは一気に修羅場と化します。
「恨むべきは、煽られたお前のアホさだろ」という突っ込みはおいといて、書き殴られた罵詈雑言は50や100に留まらず、アダストリア暴落から3日後には連日500件を達成する状況です。
「あわてるな」
「株価はいずれもとの水準に戻る」
と、コメント欄で真摯に対応する「まつうらじゅん」
2chにおいても「まつうらじゅん」は時の人となりました。投資詐欺の筆頭格に挙げられ連日連夜徹底的に糾弾される。
1週間が経つ頃には、コメント欄の罵詈雑言は800件超を達成していました。あまりのヤバさに、とうとう、まつうらさんはコメントへの返信を控えるようになります。
それでも、まつうらさんはなんとか頑張って記事を更新し続けました。アダストリアのビジネスモデルは過渡期ゆえに業績にバラつきが生じるとか、長期で保有していれば必ずや業績と株価は噴き上がると、健気にも更新を続ける。
ところが、ブログが更新されればされるほど、コメント欄はますます炎上。そしてついに、罵詈雑言は1000件の大台を突破。
その一方、まつうらさんを擁護するコメントも少数ながら見られました。
「にゃん」さん
『にゃん』さんは、まつうらさんの信者の一人です。
語尾に必ず「にゃん」をつけるのが特徴の、「まつうらじゅん」の数少ない擁護者。
嵐のようなまつうら批判の中、主のアダストリアの分析を信じ同株を決して売らない旨を書き続け、まつうらさんの復活を願い、健気に応援のメッセージを書き続けていました。
が、批判の矛先は今度は『にゃん』さんにも向かい始める。
『にゃん』のメンタルを叩き直せ!
と、『まつうらじゅん』と『にゃん』両方を侮辱する書き込みで、コメント欄はさらに炎上していく。
ブログ閉鎖
「まつうじゅん」はブログを閉鎖しました。
連日連夜の批判の嵐にメンタルがやられたのか、嫌気がさしたのかはわかりません。ヤバすぎる炎上に恐怖を覚えたのかもしれない。
ちなみに、アダストリア(2685)のその後の株価はというと⤵︎

※アダストリアHDは、28.3.1をもって株価分割を行なっています。上記のグラフは、分割前に補正している。
2013年10月以降、株価は4000円から2000円まで滑り落ちているのがおわかりいただけると思います。炎上が始まったのはこの頃です。
ところが、その後株価は反転。2016年6月には株価は、なんと8400円にまで達するというね。