以前も書いたとおり、⤵︎
僕のポートフォリオは、エクソン【XOM】はじめ16銘柄で構成されているわけだが、「個別株」しか買わないのは、僕自身が「投資信託」や「ETF」といった商品を好まないからだ。
投資信託やETFというのは、いうなれば「銘柄のまとめ買い」である。
「まとめ買い」ということは、自分の好きな銘柄も好まない銘柄も丸ごとひっくるめて買う、ということだが、ここに僕は強い抵抗を感じるのだ。
自ら「怠け者の投資法」などとうたうファンドもあるように、「パッシブ運用」なんてものは思考停止した人のやる投資法だと考える。
特に「効率的市場仮説」や「ドルコスト平均法」に対しては不信感を通り越し、もはや軽蔑の念を抱くほどだ。
弱者でも勝てる投資法?
吐き気がする。
そもそもだ。
「パッシブ運用」や「効率的市場仮説」などという概念は、より多くのカモを人を市場に呼び込むために、学者と証券会社がタッグを組んで編み出したものだ、ということを投資家はもっと認識したほうがいい。
今回は、インデックス指数との付き合い方に関して、僕なりの知見を少し述べたいと思う。
証券業界の画策
S&P(スタンダード&プアーズ)500指数が考案されたのは1923年の話だ。
インデックス先物は当時の市場からは好評価をもって受け入れられ、その後も様々なタイプの指数が開発されていく。
以降、こうしたインデックス指数は、企業年金機構や投信会社などのファンドの運用源として、積極的に取り入れられようになっていった。
インデックス指数の値動きが個別銘柄の値動きを本格的に圧倒し始めたのは1980年代に入ってからだが、それ以前から証券業界はあることを画策していた。
昔の株式市場はいわば「鉄火場」。万人に開放されているとはいえ、その実情は、ゴリゴリの「猛者」のみがリングを占めるという極めて閉鎖的な市場だった。
「猛者」どものバトルオーラに満ちているのも活発化して結構なことだが、証券業界からすれば、それだけでは儲けの効率が悪い。顧客が「株オタク」や「株中毒」だけでは手数料収入において限りがあるからだ。
そこで証券業界は考えた。
投資人口をもっと増やせば、我々の手数料収入ももっと増やせるのではないかと。そうしないのは、我々にとっては大きな機会損失であると。
投資人口を増やすためには、今のままではダメだ。「普通の人」がとっつきやすいタイプの「商品」を開発する必要がある。でなければ、投資の「裾野」は広がっていかない。
必要なのはもう一つ。
普通の人が飛び付きやすくするためには、素人がもっともらしく感じられるような「方便」が要る。個別銘柄の分析は知的な作業だが、素人の気を引くには小難しすぎてナンセンス。
という証券業界の都合で編み出されたのが、上記「パッシブ運用」や「効率的市場仮説」といった概念というわけだ。
より生々しく誤解を恐れずにいえば、「効率的市場仮説」というのは、証券会社の「マーケティングの産物」なわけである。
このマーケティングが大成功を収めたのは、みなさんご存知のとおりだ。ETFや投資信託が世界規模で徐々に浸透し始め、現在では個別銘柄の値動きにまで影響を及ぼすようになっている。
「パッシブ運用は、とても理にかなった立派な投資法じゃないか。」
と言い張る人もいるだろうが、もっともらしく聞こえるのは当たり前だ。過去のデータから都合のいい面だけをほじくり返してるだけなのだから。
株屋はよく言う。
バブル崩壊で大損こいたとしても、その後日経インデックスをコツコツ買っていれば、なんと現在プラ転してるではないか!(=だからインデックスをコツコツ買え)と。
確かにそのとおりだ。
しかしながら、後世からすれば、そんな理屈は何とでも偉そうに言える。あの当時の日経平均が低迷しまくっていた状況下で、実際に20年以上もドルコストし続けられる人が一体何人いるというのか。
屁理屈もいいとこだ。
パッシブ運用が必要な人と必要でない人
とはいえ、パッシブ運用が全く使い物にならないのか?といえば、そうではない。むしろパッシブ運用でなければならない人もいる。
そう、「投資リテラシーのない人達」や「投資経験のない年寄り」だ。
投資に興味のない人達や、年齢的にリスクをとるべきではない彼らにとっては、「インデックス指数をドルコスト平均で分散買いする」というのは、むしろ極めて合理的だと考える。
現に僕も、定年退職前の人たちから「投資すんの初めてなんだが、どこがええかな?」と聞かれることがあるのだが、その場合、例外なく「セゾン投信」をすすめている。
「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」は債権の割合が50%もあるため、株式のみのファンドに比べればボラティリティは著しく低い。
投資信託だから基準価額の値動きは日に一回のみ。相場の荒波に心乱されることもないため、アニマルスピリットの必要ない年寄りが積み立てるには、これほどうってつけのファンドはないだろう。
ただし、若造は別だ。
仮にも「投資家」などと自称する若者が「インデックス指数連動型」にしか投資しないというのは、正直ダサいの極みだろう。んなことして一体何が面白いのか。
「バトル(戦闘)」で消耗するより「ウォー(戦争)」で勝つほうがマシだとの屁理屈はわかる。わかるのだけども、そんな消極的な投資姿勢では大きな利益を得ることはできやしない。できるにしても、あまりに時間がかかり過ぎる。
「投資家」なんだろ?
お金が欲しいんだろ?
だったらもっと積極的にリスクをとるべきではないのか。
いくらETFや投資信託を熱心に買い揃えたところで、そんなのは定期預金に毛が生えたようなものだし、なにより銘柄分析能力が上がらないわ投資の勉強にならないわで、お金と時間の無駄でしかない。
ジム・クレイマー
僕がインデックス投資を嫌っているのは、間違いなく、この本のせいだろう。⤵︎
ジム・クレイマー氏はアメリカの投資家だ。氏の得意分野はファンダメンタル分析。
一般投資家の投資リテラシー向上を人生の指針にするという、なんとも意識高げなオッサンである。
普通では気づき得ない情報をも、「投資教育」の名のもとに一切出し惜しみせぬその姿勢には、多くのアメリカ人から一定の敬意が払われている。
出演番組「MAD MONEY」では、下をまくし立てて叫んだり暴れたりするなど、見事なエンタメ要素も兼ね備えている⤵︎
というようにカリスマ投資教育者ともいうべき「ジム・クレイマー」氏だが、同氏はインデックスやETFをかなり毛嫌いしており、推奨銘柄は個別株のみというゴリゴリの「個別株投資」派だ。
上記の本にしても、冒頭からいきなり「インデックス投資」をこれでもか!というくらいディスり倒している。
「効率的市場仮説」などゴミ扱いで、それらを発明した学者・上場を認めたSEC・広めた証券会社を「市場を歪めたクソ野郎ども」などと、ボロクソこきおろしている。
傍目から見ればただの口の悪いオッサンだが、実は、クレイマー氏の主張には話の筋がしっかり通っているのである。
僕のバイブルともいえるローリスク株式必勝講座」には、そういったクレイマー氏の投資理論がふんだんに盛り込まれているのだが、いかんせん、こうした書籍においてもえらく感情的に書かれているため、そっちのが気になって肝心な主張が見落とされがちになると思われる。
ということで、感情的ではない僕が、同氏の重要な主張を「さわりの部分」だけでも取り上げてみよう。
インデックス投資が株価が歪めている
大手の機関投資家といった連中は、今やこぞってETFを買うようになっており、ポートフォリオの組成にわざわざ個別銘柄を入れるファンドは今や少数派だ。
そもそもなぜ機関投資家は個別銘柄を買わないのか?というと、はっきりいえば、一つ一つの企業をイチイチ分析するのがめんどくさいからである。
個別銘柄を分析するよりも、同業で固めたセクターETFを買って市場平均で落ち着いたほうが、よほど手間がかからないから。
こうした流れはここ数年で加速しており、今や機関投資家やヘッジファンドがこぞって大量の資金をセクターETFやインデックス指数や先物に投下する有様だ。
大量の資金がETFや指数に投入された結果、組成される個別銘柄の値動きはほぼ同一のものとなってしまった。今や業績の悪いゴミ企業から超優良企業まで揃って同じ値動きをする有様である。
クレイマー氏曰く「市場が歪められ、嘆かわしい状況にある」というわけだ。
そうかもしれない。投資家であれば思い当たる節はあるはずだ。
たとえばパッケージドフードメーカーだと、ゼネラル・ミルズ【GIS】とケロッグ【K】の値動きなんてほぼ同じもいいとこだ。
石油メジャーだと、優良と言われるエクソン【XOM】やシェブロン【CVX】と正直イマイチなブリティッシュ・ペトロリアム【BP】の値動きは、長期でこそ違えど短期で見ればほぼ変わらない。
同じビジネスというだけで全社揃って同じ値動きをするというのは、大手機関投資家やヘッジファンドがセクターETFを売買しているからである。
特にヘッジファンドは強烈で、彼らは個々の銘柄の業績には全く無関心だ。彼らの運用はといえば、セクターETFを玉突きのように入れ替えてるだけ。
つまり個別株の値動きが決まるのは、ファンダメンタル面というよりも、むしろセクターETFの値動きに引っ張られる要素のほうが大きいのである。例外は決算発表の前後だけ。
いかに盤石な経営基盤と利益率を誇る企業であっても、万年低迷状態のドカス銘柄と同じような値動きにならざるを得ないというわけだ。
インデックス投資の賢い利用法
個別株の値動きは「業績」よりも「セクターETFの値動き」の値動きに強く引っ張られる。
であれば、賢い個人投資家が行うべきはその裏をかくことだ。
盲目的にセクターETFを売買するのでは話にならない。セクターETFの値動きを参考にして、割安に放置された優良銘柄を見つけるのだ。
詳しく説明しよう。
一例として、銀行やクレカ会社など金融機関のみで構成されるETF、金融セレクト・セクターSPDR【XLF】を使って説明しよう。
【XLF】の組成銘柄は、JPモルガンやアメリカンエキスプレスなどの優良銘柄から、ほぼ聞いたことのないクソ銀行まで、500種もの金融銘柄で構成されている。
ちなみにアメリカの各銀行はこぞってヨーロッパに進出しつづけており、その業績は今や欧州経済にズブズブだ。
たとえば、今後ブレグジットを皮切りにユーロから離脱する国が相次いだとしよう。(たとえばですよ?)
当然ながら、欧州の景気には悪影響が出ることになるだろう。欧州の景気が後退するとなれば、当然、欧州経済にズブズブのアメリカの各銀行の業績も下がることになる。
となれば、【XLF】は機関投資家やヘッジファンドから真っ先に叩き売られるハメになる。【XLF】が叩き売られるということは、それを組成するアメリカの各金融機関はこぞって暴落することになる。
ここで目をつけるべきは、【XLF】の組成の一つであるウェルズ・ファーゴ【WFC】だ。
ウェルズ・ファーゴ【WFC】のビジネス展開はアメリカ国内に限られており、欧州経済が後退したとて、同社の業績に直接的に影響することはない。
関係ないにもかかわらず、【XLF】のあおりをくらうがゆえに、他の金融銘柄同様【WFC】も暴落する。
ウェルズ・ファーゴ【WFC】が割安となる瞬間だ。
ここを見逃さず、果敢に買い向かえばいいのだ。業績に関係ない株価の下げは単なる一時的なものにすぎない。株価はすぐに回復する。
というのはあくまで一例だが、個別株の値動きが指数によって強くプルされるのであれば、セクターETFによって暴落させられた銘柄の中には、明らかに割安な銘柄が生まれやすいというわけだ。
これは、金融セクターだけの話ではなく、その他のセクターについてもいえることである。
ちなみに冒頭で紹介したジム・クレイマー本は現在発刊されておらず、手に入れようとすれば中古でしか手に入りません。
かなり評価の高い内容なので、今やプレミア価格が付いているのですが、手に入れられる方は手に入れたほうがいい。
クレイマー氏推奨の優良企業の凄腕CEOが列挙されてたりもするので、個別株投資家にとっては必読といえるレベルの良書です。