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リーマンショック再考|「デリバティブ」という名の大量破壊兵器

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およそ投資家であれば知らない人はいないのではないか。「リーマンショック」とは、2008年9月15日リーマン・ブラザーズの倒産に端を発した戦後最悪の世界的金融危機です。

その規模の大きさと被害の甚大さは100年に1度とも50年に1度ともいわれており、世界中の相場を叩き壊したその様はマグニチュード12レベルの人災です。

連日にわたる相場のメルトダウン

あの恐怖は、投資歴10年以上の方であればいまだ鮮明に記憶に残っているのではないでしょうか。

かくいう僕自身も、当時米ドルを200万円分20倍でロング建てしており、異常なくその全てを吹き飛ばされたというね。未熟者だった僕にはなすすべがなく、まさに「金が溶ける」様を指をくわえて眺めることしかできなかった。

リーマンショックとは、一般的には投資銀行大手「リーマン・ブラザーズ」の倒産により引き起こされたものと思われています。

確かに、リーマン・ブラザーズの倒産が本格的な暴落の引き金だったのは間違いありません。でも、あれほどの大惨事の原因をリーマンだけに押し付けるのは現実的ではないでしょう。

リーマン・ブラザーズの倒産は「金融崩壊の一過程」にすぎないのであります。

当時のウォール街には、他の投資銀行はじめリーマン級の爆弾はいくつも転がっていたのだから。ヤバかったのはリーマンだけじゃなく、どこが吹き飛んでも不思議ではなかった。

始まりは「ベア・スターンズ」の破綻

2007年までのウォール街は、一言で言えば「バブル」でした。

1 ゴールドマン・サックス
2 モルガン・スタンレー
3 メリル・リンチ
4 リーマン・ブラザーズ
5 ベア・スターンズ

「ビッグ・ファイブ」と呼ばれた上記5大投資銀行を筆頭に、当時のウォール街はリスク完全無視の危険なデリバティブ取引に首まで浸かっていました。強欲が招いた深刻なモラル・ハザードです。

デリバティブといっても一概に危険なモノばかりではありません。さほど危険でないモノも多く、リスクヘッジ面で有効なモノもあるらしい(買ったことないから知らんけど)。身近な例でいえば、日経平均先物や金利スワップ型の債権などがデリバティブに当たるでしょう。

しかしながら当時の定量分析者(クオンツ)どもがクソ金融工学によって編み出したクソデリバティブは、そんな生ぬるいものではありません。あのウォーレン・バフェットをして大量破壊兵器と言わしめたほどに、天文学的損失と隣り合わせの危険極まりない代物だったのです。

そのリスクにウォール街の連中は気づかなかったのか?

 

いいえ、気づいていました。

 

じゃあ、なぜやめなかった?

 

デリバティブはリスクを差っ引いても余りあるほどに儲かったからです。とにかく飛ぶように売れていた。

だから、リスクをガン無視してでも、みなデリバティブ取引に邁進したのであります。

 

サブプライム・モーゲージ

当時のアメリカ社会は住宅市場がバブル化しており、およそどんな低所得者であろうが容易に住宅ローンを組める状況でした。

こんなものは普通に考えれば非常にリスキーだとわかるけど、それが是とされていたのが当時の怖いところです。

その状況をさらに後押ししていたのが、皆さんご存知の「サブプライムローン」です。年収300万に満たない人々でも、豪邸をいくつも持っていたというのだから驚きです。

なぜ、そんなことができたのか?

売れば買値よりも高値で売れたからです。たとえ返済能力が尽きたとしても売ればチャラにできたのです。しかも含み益というおまけ付きで。

ピンポン球工場のパートの黒人おばちゃんですら容易に1億円の豪邸を買えたというのだから、いかにアメリカのタガが外れていたかがおわかりいただけるかと。

この異常な状況も住宅市場が値上がりしてるうちは問題ありません。

でも、もし値下がり始めれば?

低所得者の身の丈に合わない住宅ローンなど一気に焦げ付くのはいうまでもないでしょう。

モーゲージ証券とは

まず住宅ローンを貸し出した銀行は、「住宅ローン債権」をもつことになります。その後、銀行はこの「住宅ローン債権」を投資銀行など金融機関に売却します。買い取った金融機関はそれを証券化します。その証券は投資信託などに混ぜ込まれパッケージ化して売り出されます。売り出されたのが、「モーゲージ証券」です。

 

当時のモーゲージ証券はサブプライムローンが大量に組み込まれておりました。そんなゴミのような証券にも不自然なほどの格付けが与えられ市場にばらまかれていたのです。

さらに金融工学を用いて、このモーゲージ債を他の優良債権と混ぜこぜにパッケージングしたのが当時のデリバティブです。このような「毒入り」デリバティブが、当時は世界中で大量にばらまかれていたわけです。

 

ベア・スターンズの破綻

偽りの豊かさがいつまでも続くはずはなく、2007年後半以降、アメリカの住宅バブルは徐々に終焉が訪れます。住宅価格の値下がりとともに、ウォール街もきしみ始める。

当然、次に起こるのは、

モーゲージ債の不良債権化

それまで大量にばらまかれた毒入りパッケージが時限爆弾のように破裂し始めました。

そうしてついに「ビッグ・ファイブ」の一角、ベア・スターンズが沈みます。

経営が行き詰まったベア・スターンズは、なんと一株2ドルでジェイミー・ダイモン率いるJP・モルガン銀行に身売りをすることになったのです。買収の裏にはアメリカ政府の意向が絡んでおり、当然ながら、連銀からも莫大な資金が注入されている。

倒産を免れたとはいえ、ベア・スターンズは事実上ここで消滅。このベア・スターンズの消滅は、後のウォール街に「信用不安」という大きな影を落とすことになります。

その信用不安が後々リーマン・ブラザーズの経営にボディ・ブローのようにダメージを与え続け、やがては破綻へとつながっていくのです。

 

AIGの大罪

CDSとは

企業のデフォルト(債務不履行)のリスクを取引するというデリバティブの一種で、企業はCDS契約の保証料(プレミアム)を支払うことで、デフォルト時に元本を保全できる。

要は倒産をヘッジするための保険のこと。

 

CDSはリーマンショックを語る上でのキモの部分でもあるので、さらに簡単に説明しておきましょう。

ある企業がデフォルト(債務不履行)した場合、CDS契約を結んでおけば、倒産にかかる負債を払わずにすみます。

その負債は、CDSの売り手側が支払うからです。

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つまり、CDSの買い手側は定期的に保証金(CDSプレミアム)を支払う。CDSの売り手側は買い手側から保証金を受け取るかわりに、その倒産時には全てを被らなければならない。ということです。

では、負債を被った売り手側がさらにデフォルトした場合どうなるのか?

その売り手側もCDS契約を結んでおけば、その負債を払わずにすみます。

その負債は、さらに次のCDSの売り手に渡されます。

これがCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)です。次々に倒産連鎖を引き起こす、恐るべきデリバティブといえるでしょう。

そしてこのCDSを開発したのが、AIG(アメリカン・インターナショナル・グループ)です。AIGがCDSのビジネスに手を染めたのは2001年。以来AIGはこの分野における一大プレーヤーとなります。以降5年間にかけてCDSを売りまくりました。

売りまくって儲かったまではいいのですが、リスクが顕在化したとなれば話は違います。当然ながらCDSの買い手の中には倒産リスクが高まる企業も出てくるわけで、もしそれらが倒産すれば、それらの債務は全てAIGにのしかかります。

さらに救い難いことに、AIGはサブプライムローンそのものも引き受けていました。内部のFP(フィナンシャル・プロダクツ)部門が、5000億ドルという大量のサブプライムローンをいつのまにか買い込んでいたのです。

これに火がつけば、CDSと合わせてAIGには天文学的な負債がふりかかる。このAIGこそが、あの金融危機におけるもっとも危険な企業の一つであったのです。

 

フレディ・マックとファニー・メイ株のメルトダウン

ファニー・メイは連邦住宅抵当公庫の通称です。「連邦住宅抵当公庫」という名前から一見公的機関のように思われるでしょうが、100%民間株主に所有される上場企業であります。フレディ・マックもほぼ同じ。

両社の仕事は、銀行などから住宅ローン債券を直接買い取り、それをもとにモーゲージ証券を発行し保証することです。事業内容からして如何にもヤバそうですが、

これが実際ヤバかった。

プライム・ローンだけを扱ってれば良かったものの、こともあろうかAIG同様、両社は1999年からサブプライム・ローンを引き受けていたのです。両社の資産はことごとくが不良債権化しました。

市場からの不信感を受け、ファニー・メイとフレディ・マック両社の株価は急落。当時90ドルだった株価は、わずか1年後の2008年9月にはたったの3ドルという暴落ぶり。

ファニー、フレディ両社ともに救いがたいのは、ほかにもデリバティブ取引にものめり込んでいた点です。サブプライム・モーゲージを売りさばいた元凶であることのみならず、極めて格付けの低いCDSまで売りさばいていたのです。

これが両社にとっての致命傷となります。ファニー・メイ、フレディ・マックが売りさばいたCDS。それは優良であるどころか、極めて倒産リスクの高い「猛毒」でありました。

アメリカの世論はこの両社を救うことに反発し紛糾します。当然でしょう、自分たちの資産をめちゃくちゃにした元凶を、なぜ自分たちの税金をもって救わなければならないのか。

かといって、この両社の倒産はアメリカ経済へのあまりに影響が大きすぎる。両社が倒れれば、間違いなくドミノ倒しが起こる。

俗に言う「大きすぎて潰せない」とは、このことです。

当時のウォール街は、国民の好む好まないに関わらず、政府の助けが入らざるを得ない状況だったのです。

 

こうして、アメリカ金融業界には「信用不安」という断層が次々と現れ続けます。

ポールソンやガイトナーの決死の介入も虚しく、その断層は第3位の投資銀行メリル・リンチにも襲いかかり、第4位のリーマン・ブラザーズの破綻を招くことになります。

その衝撃はリーマンの破綻にとどまらず、やがては「ビッグ・ファイブ」第2位のモルガン・スタンレーをも沈めることになるのです。

 

リーマンショックを深く知りたければ、「リーマンショック・コンフィデンシャル」を読むのが一番です。小説風に書かれているので、楽しみながら読むことができます。

 

小説が苦手な方には映画をおすすめします。

「マネー・ショート」

 

リーマンショック映画の金字塔ともいえる作品です。はっきり言って、これはヤバい。2時間釘付けになること間違いないでしょう。

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