世の中にはモノを大切に扱う人間と、モノを粗末に扱う人間がいる。
モノの扱い方をみれば、その人間性がわかるとも言われている。
基本的に、モノの扱い方と人間関係の築き方は同じだからだ。
ビジネスパートナーとして信頼できるか、
異性のパートナーとして信頼できるか、
信頼できる友人となり得るか、
モノを大切に扱うかどうかは、信用の置ける人間か否かの判断の指標にもなるのである。
モノを大切に扱う人間ならば、同じように自分との関係も大切に扱ってもらえる可能性は高い。
逆にモノを粗末に扱う人間ならば、同じように自分も粗末に扱われ消耗品のように使い捨てられる可能性が高い。
これは私の経験からも、かなりの高確率で当たるのだ。
試しに他人を平気で傷つけ粗末に扱う人間が、モノをどのように扱っているかを見てみればいい。
愛着などあるはずがなく消耗品のように手荒く扱う姿を見ることができるだろう。
もちろん、私はモノを大切にする人のほうが好きだ。
それが靴であれ、カバンや服であれ、車、家電製品、ITデバイスであれ何でも良い。
限界まで大切に使う。
買い換えるにしても、文字通り使い古した挙句にやむなく買い換える。
モノに対し愛着をもって大切にしている姿を見れば、それだけでも信用の置ける資質ありと思うほどだ。(もちろん、それで100%ではないが)
私自身がモノに対して愛着を持つタイプなので、共感できるものがあるのだ。
IWC(インターナショナル・ウォッチ・カンパニー)
私の持っている中で、最も古いモノは腕時計だ。
車や家電製品は機能面や耐久性という問題があるため、末長く使うというわけにはいかない。
末長く使えるという点では、腕時計をおいて他にはない。
高級腕時計は、きちんとメンテナンスしていれば何十年でも使い続けることができるのだ。
私も軽く10年は使い続けている。
高級腕時計と聞けば、ロレックスかオメガを思い浮かべる人が大半だろう。
IWCという時計メーカーは、時計好き以外にはあまり知られていない。
IWC(International Watch Company)はスイスのメーカーで創業は1868年。
レトロな機械式時計の生産にこだわり、高い技術力に定評のある由緒ある時計メーカーだ。
IWCの時計はその知的でストイックなイメージから、数々の映画の中のワンシーンにも登場する。
最も印象深い映画は『戦場のピアニスト』
2002年発表の映画で、第二次大戦中のポーランドが舞台。
ナチスドイツの侵攻により、ユダヤ人ピアニストの「シュピルマン」は迫害され逃亡生活を余儀なくされる。
逃亡の極貧生活の中、食うに困ったシュピルマンは、やむを得ず愛用の腕時計を売却する。
その時計こそがIWCというわけである。(当時はInternational Watch Companyという筆記体)
コレは実話であり、終戦後にシュピルマンが再び買った腕時計もやはりIWCだったそうだ。
その他にも様々な著名人に愛された歴史をもつIWCだが、現在においてもフォーマルな時計から現代的なカジュアルな時計まで範囲を広げ生産を続けている。
私はIWCの時計を2本持っている。
その中の一つを紹介したい。
『パイロットウォッチ マーク15』

写真で見ただけでは、何の変哲もない地味な時計に見えるだろう。
しかし実際に手に取れば、実に丁寧に作られた時計だと感じるはずだ。
ケースとブレスの素材は質の高いステンレススチールが使われ、鍛造製法によりややズッシリとした重量感がある。
研磨もしっかりと施され、ベゼル部分の鏡面仕上げには曇りや歪みはなく、ケースやブレスのサテン仕上げも質が高い。
精度にしても平均日差は+5秒程度で、機械式時計としては申し分ない。

ガラス部分はサファイアクリスタルで反射を抑えるコーティングがなされている。青く反射して見えるのはそのためだ。
何より優れているのはデザインだ。
視認性を追求したシンプルな軍用時計だが、飽きのこない文字盤のデザインは10年経った今でも見とれてしまうほどだ。
この時計を買ったのは、確か20代中頃。
当時はコレが似合う大人になりたいと、かなり背伸びして買ったのを覚えている。
それ以来、人生の様々なシーンにおいて時を刻み続けてくれている。
楽しかった時も苦しかった時も常に正確な時間を刻んでくれた。
この時計が似合う大人になれたかどうかはわからない。
しかし、少なくともモノに対して愛着を持ち、それを大切に扱える大人にはなれたと思っている。
メンテナンス代金はハンパないけど(4〜5年おきに50,000円)、
これからの10年もよろしく。