【ニーシング】の簡素なマリッジリングを持っています。
買ったのは8年前の結婚当時。以来、年がら年じゅう左手につけており外すことはほぼありません。このマリッジリングは今や僕の身体の一部といっても過言ではないでしょう。
「ニーシング」を結婚指輪に選んだのには明確な理由があります。「美しくも飽きのこないシンプルなデザイン」が良くて尚且つ、「品質の良いモノ」という僕の厳しい選定基準をクリアしたのが、このニーシングだけだったからです。
大切なモノは末長く使いたい。
僕と嫁のぶん2つで計27万円。簡素なデザインにしては高額だと思います。当時の僕の収入からすれば、決して安い買い物ではなかった。
あれから8年。表面に多少のくすみは出ているけれども、買った当初と変わらぬ形で今も僕の左手薬指におさまっている。
それを見ると「あの時、背伸びして買ったのは正解だったな」と、しみじみ感じる次第であります。
ドイツの至宝
「ニーシング」という指輪メーカーが、なぜ「ドイツの至宝」とまで賞賛されるのか。それは、他社には模倣できないほどの卓越した技術を基盤とした、非常に個性的でアーティスティックなラインナップにあります。
まずは、その代表傑作を2つばかり見ていただきましょう。
アイリス(Iris)

このモデルの最大の特徴は、ゴールドとシルバーの溶け合うような融合にあります。ポイントは、2つの異なる金属が描く自然なグラデーション。
異なる金属の2層構造であれば他のメーカーでも作れますが、これほど自然で美しいグラデーションはニーシングのラインナップ以外に見たことがありません。この「アイリス」だけだ。
一体どうやって作るのか? 他の指輪メーカーには、その製法すら皆目見当もつかない。
パクりたくとも、
そもそもパクり方がわからない。
それほどに、高度な技術の粋が込められた指輪。それが『アイリス(Iris)』です。
オーラ(Aura)

『アイリス』と似たタイプで『オーラ』というモデルもあります。こちらはピンクゴールドとシルバーゴールドの融合。これまたアイリス同様、自然で流れるような美しいグラデーションを体現している。
見事としかいいようがありません。
クラフトマンシップ
ニーシングの卓越した金属加工技術は「融合」だけではありません。それを語るにはまず、「鋳造製法」と「鍛造製法」を語らねばならないでしょう。
鋳造製法
「鋳造」とは、液状に溶かした金属を「枠(キャスト)」に流し込んで作る指輪のことです。
鋳造の利点は「デザイン面での融通」がきくことです。最初に型枠をデザインしとけば、あとはそれに金属を流し込むだけですからね。一つ一つ作るといった手間が省けるぶん、コストも安く抑えられます。
デメリットは強度が弱いこと。「オレの結婚指輪、楕円型に変形しちゃったよ。」と嘆く人たちをよく見かけるでしょう。そのひん曲がった指輪こそまさに「鋳造の安物指輪」だと考えて間違いありません。
鍛造製法
「鍛造」とは、読んで時のごとく、高温で熱された状態の地金をハンマーで叩いて成形する製法のことです。
強度を高めることができるのが鍛造製法最大の利点です。ハンマーで叩くあるいは機械でプレスすることで、「ス」と呼ばれる気泡を地金からはじき出します。「ス」がなくなることで地金の密度は高まり、それがそのまま強度となるのです。
この製法のデメリットは、「デザイン面での融通がきかない」点です。そしてプレス成型という手間がかかるので、そのぶんコストも跳ね上がるというのも、鍛造製法のデメリットでしょう。
ニーシングリング(Niessing Ring)
ニーシングの指輪はすべて、この「鍛造製法」で作られています。もちろん大量生産などではありません。鍛造製法を採用するジュエリーメーカーは多くありますが、ニーシング社の鍛造技術は明らかに他社の技術水準を抜きん出ています。
ニーシングの地金は、人の力では曲げることはまず不可能なほどの強度を誇っています。よほどの力が加わらないかぎり変形などしない。
耐久性こそが、
「一生モノ」であることの必須条件です。

これが、ニーシング最高傑作といわれる「ニーシングリング」です。このようにダイヤモンドを地金の強さのみで固定する方法を「テンション・セッティング」といいます。
指輪にダイヤをセットするには様々な方法があります。例えば、ティファニーの「ティファニー・セッティング」は、ダイヤを鉤爪で鷲掴みするようにしっかりと固定するセッティング方法です。
ヴァンクリーフ&アーペルが得意とするミステリー・セッティングは、 金属枠と宝石の溝を噛み合わせたり引っ掛けたりすることでダイヤを固定するセッティング方法です。
上記2つのセッティング方法は他の指輪メーカーでもこぞって採用されていますが、この『テンション・セッティング』だけは他メーカーが模倣することは不可能といわれています。このセッティングはニーシングにしかできない。
まず、ダイヤを挟み込むには地金を引き離さなければなりません。しかしながら、その地金は「ニーシング流鍛造製法」でつくられているため、とてつもなく強度が高い。万力機で引っ張ってもビクともしないほどの強度だそうです。それほどの強度をもつ地金を引き離しそこにダイヤを挟み込む。
一体どうやって??
これまた皆目見当もつかない。つまり、マネしたくとも他社にはマネできない。
もっとも、ここ数年の間でこのテンション・セッティングを模倣するジュエリーメーカーがいくつか現れているようですね。が、やはりフェイクは所詮フェイク。ニーシングに比すれば地金の強度は段違いに劣っております。その完成度は本物のニーシング・リングからは程遠い。
妥協を知らない超技術者集団ニーシング
宝飾業界全体に言えることですが、指輪の製作そのものを外注で丸投げするメーカーは多いです。企画から製造まで自社一貫生産ができるブランドは本当に少ない。
世界的に知名度の高い某ブランドですら、その実状はアウトソーシングに丸投げ状態です。指輪・アクセサリー・革製品をつくるにあたり、メーカーはまず設計図や完成イメージ図をつくります。
ここまではいいのですが、問題は、その図を他社に渡して製作を丸ごと依頼するということです。製造には何もタッチしない。あとは納品された品に自社のブランドロゴを貼り付る。それを、あたかも自社がつくったかのようにブランド品として世に出す。
ここまでくれば、単なる品質管理会社でしょう。ひどいブランドだと、最初のデザインすらも他社に外注しているという。
これが、ブランド業界の実態です(全部ではありませんが)。なんかシラけますね。
別に、アウトソーシングが悪いというわけではありません。完成品さえ素晴らしければ良い。消費者が満足できれば、それはそれでいいのかもしれません。コスト面を鑑みれば、実に合理的な経営手法でありましょう。でも、
ロマンがない。
ニーシングに関してはその心配は不要です。
ニーシングは完全自社一貫生産を貫く、数少ないジュエリーメーカーです。ニーシングの工場から出荷されるジュエリーは、全て、ニーシング社の卓越した技術者集団が門外不出の奥義をもって作り込まれたモノです。指輪やアクセサリーの1つ1つが職人の手作りなのです。
自社製品への愛に溢れる卓越した技術者集団。それが、『ニーシング(NIESSING)』なのです。
まとめ
ニーシングの指輪は本当に素晴らしい指輪です。10年間、年がら年中「ニーシングの指輪」を眺め続けて来た僕がいうのだから間違いありません。
結婚をご予定されている方がこの記事を読んでいただくことで、『ニーシング』を選択肢の1つに加えていただけるのなら、物書きとしては描き甲斐があるというものです。