「思考のスパン」とは、わかりやすくいうと、「どの時点まで、未来を意識して生きているか」ということだ。
人は多少なりとも未来を意識しながら生きているが、どの時点まで意識してるかは人による。
今日の快楽にしか興味ない人もいれば、5年先10年先を見据えて努力する人がいたりと、人の思考は様々である。
アメリカの大物マーケター・マイケル・マスターソンによると、人のもつ「思考のスパン」は以下の4つに分類できるらしい。
1.1日単位
2.1週間ないし1ヶ月単位
3.1年単位
4.数年単位の長期スパン
相手がどのステージにいるかを見抜くのは、人を理解する上では重要だ。
特に職場やビジネスにおいては、ここがわからなければ、関係を築くことは難しい。
今回は、上記1〜4各ステージの人間像を述べてみたい。
1日単位でしか物事を考えられない人
このステージにいる人たちは基本、未来を意識しない。
彼らが意識するのは「今日という日を如何に楽しく過ごせるか」「今日を如何にラクに乗り切るか」だけで、それより先は考えない。
いわゆる「その日暮らし」だが、この手のタイプはフリーターに限らず、実はサラリーマンにもいる。
周りにいないだろうか?
「会社の事情を考えても仕方ない。僕らは1日1日、与えられた仕事をしっかりこなすだけ。」
と、得意げに語る人たち。
もっともらしく聞こえるが、あれは単に未来を考えるのが億劫なだけで、未来をより良くすべく、「今」努力するのが嫌なだけだ。
とにかく、彼らの関心は今日にしかない。
今日を楽しむことが絶対な彼らに、いくら「今は辛くても、やれば未来はバラ色だ!」と熱く語っても、響くわけがないのである。
今日を楽しみたい・ラクをしたいのに、なぜ今辛い思いをしなきゃならんのかと、彼らにとっては、それ自体が矛盾だからだ。
1週間ないし1ヶ月単位で考える人
バイトの主任みたいなものだろうか。
彼らは、来週のシフトや来月の計画まではよく練れるし、そこに向けての努力はできる。そして、そこに仕事のやり甲斐を感じている。
が、それより先を見通すのは苦手だ。というか、彼らの守備範囲は1ヶ月かそこらであり、それ以上先のことには興味がない。
関心がないのだから、彼らにいくら長期的な目標を掲げさせようとしても、響かないのは当然である。
それが彼らのステージなのだから。
1年単位で物事を考える人
このステージにあたるのは部長や支店長クラスだ。つまり、一つの入れ物を任されている人たち。
彼らの関心ごとは、「今年ないし今期の目標を達成すること」で、そこに対する意欲と執念は凄まじい(上から怒られるってのもあるけど)。
足らなければ自ら動くなど、能力値も比較的高く、目標達成のためには日々の努力を厭わない。部下への押し付けも厭わない。
そのかわり、来年や来期の業績にはそれほど興味がない傾向にある。
思い返してみてほしい。ほとんどの部長や支店長は、(今期をなんとかするぜ)くらいの発想だろう。
中には、全く頼りにならず部下から非難ごうごうの部長や支店長もいるが、あれは、実は彼らが2くらいの器でしかないにもかかわらず、
なまじ役職が上がってしまったがために、無理くり身の丈以上のポジションに就かされているからだ。
要は「人選のミスマッチ」。
数年単位の長期スパン
このクラスの人たちは極少数派だ。
彼らの目標は長期にわたるものである。それは人生を通してのものだったり、5年・10年先まで見据えたものだったりする。
目先の利益よりも、「どう生きるか」といった哲学的な方向に関心があり、1〜3の短期的な目標にはほぼ関心がない。
ビジネスに関しては長期的な視点で考えている。
思考が壮大すぎるため、その価値観を共有できる相手は一般社会では見つけにくい。友だちができず、常に孤独の中で生きがちだ。
名うての起業家や経営者などはほぼこのステージにいる。
彼らは常に長期スパンで物事を考えるため、逆に、短期スパンの仕事ができない傾向にある。
1〜3の仕事もやろうと思えば普通にできるが、いかんせんアホらしくてモチベーションが続かない。結果、パフォーマンスが落ちる傾向にある。
なまじ先が見通せるため、いくら目先の成果が良かろうとも未来を悲観しまくる。その理由を、短絡思考のパンピーには理解できない。
俗に言う「変人」や「天才」が多いのがこのカテゴリーだ。
彼らは特殊なため、一般社会ではなかなか同志を得にくい。一般的な「雇われる」生き方では、耐え難いストレスにさらされるはずだ。
だからビジネスを展開し、社会に対し、自分なりの「価値提案」をしていく。
自分がどのステージにいるかを分析せよ
1.1日単位
2.1週間ないし1ヶ月単位
3.1年単位
4.数年単位の長期スパン
以上、4つのステージをあげてみた。
ちなみに、どのステージに入るかは先天的に決まっており、今いるステージから動くこともほぼない。
30代半ばも超え1や2で生きてる人が、いきなり3や4に上がるとは考えにくいだろう。
いくら支店長として優秀でも、3が限界であれば4には行けない。理解すらできない。
ちなみに雇われ社長はほぼ3である。
雇われ社長の会社が没落しやすいのは、社長自身に長期的なビジョンや信念がないからだ。トップ自身の目標が「2年かそこらの就任期間を全うする」では、その会社は繁栄しない。
社長業というのは、いかに従業員を適材適所に配置するかである。社長と名乗るからにはせめて3より上でなくてはならない。
その上で、従業員がどういうタイプでどのステージの思考かを見抜く必要がある。
1や2で生きてる人を3にもってこようとしても、そりゃ無理だろって話だ。発想がせいぜい3止まりの人間を自分のブレーンに据えられるか?って話だ。
そもそも4で生きてる経営者が、自分と同じレベルを従業員に求めるのも無理な話である。
べつに経営者でなくとも、相手がどのステージの思考で生きてるかを見抜くことには意味がある。
相手のステージがわかれば、それに合わせた価値観で話すことが可能だからだ。相手を理解すれば、それに合わせた人間関係の構築が可能になる。
ちなみに、いくらあなたが正しかろうが、意識高かろうが、
相手のステージを変えることはできない
絶対に。変えることができるのは、相手に対するあなたのアプローチだけだ。
要は、人をどこまで理解できるかが重要で、これこそが、この世知辛い世の中をうまく渡るためのカギといえるだろう。